「TAR」を見ました。
映画「TAR」のことについて書いています、ネタバレがあるので気になる方は戻ってください。
という前置き通り先日映画「TAR」を見ました。
本来映画が好きなのですが、子供ができてからおいやそれとは映画館へ行けなくなりました。
仕事終わりにレイトショーに行くってことをしていたんですが、夜は息子を風呂に入れないといけないのでそうはいかない。
でもちょっとしたタイミングの巡り合わせで気になっていた「TAR」を見に行くことができました。
2時間30分の長い映画で、クラシック音楽という難しそうな世界の話で集中力のいる内容でした。
あの場面は、この場面は、なんて話をしていたら長くなりすぎてしまいそうなので乱暴にまとめると、天才の話ですね。
一見ただの天才に見えるけど、必死に作り上げた天才で、完璧な表面の内側は人間味もあって弱さがある。
天才を維持するのには努力もあるし、障害といえるほど音に過敏になっている、その表現がスリラータッチで緊張する。
自分が天才だという認識があるがゆえに他の人を見下す傾向がある。
で、そんな天才が作り上げるものは、やはり天才的で完璧、だから周りの人間も従う。
それで上手く行っている期間は長くはなくて、その完璧に組み上げた自分は高くなりすぎてしまって、積み木の足元の一つのピースが崩れると脆い。
世界最高のオーケストラの指揮者がエンディングではアジアの地方都市のゲームの生音上映会の指揮者をしていた。
そこでは誰も音楽を聴きに来ていない、別の目的で来ている。
頂点から底辺へ、その振れ幅がすごい、哀れみを感じるほどに。
でも主人公は音楽から逃げずに、その底辺でも再び真摯に楽譜に向き合って音楽を続けている。
その姿に「なんて強い人なんだ」と再びその天才さに驚いて映画は終わった。
というのが僕が映画を見て思ったことです。
権力を持つと自分が神にでもなったように感じるものなんだろうか、自分は一人親方の家具屋なのでなんの権力もないので理解はできないけど、世の中の政治家や大きな企業の役員なんかのニュースを見ているとあることなんだろう。
特に指揮者という自分が振る棒に100人近くの人が忠実に従うわけだから象徴的な存在ですね。
主人公は決して悪人というわけではないけど、ある種の悪魔に魂を売ったような狂気を感じたのも印象的でした。
あとはケイト・ブランシェットがやばい、この映画はこの一言でまとめてもいいほどに。
いい映画だったとか感動したとか、そういう感想ではないけどすごい映画でした。
余談になりますが、マスクなしで見る映画はすっきりして良かった、これは3年半ぶりの感動。