フィンランド研修 セイナッツァロ
ユヴァスキュラを堪能した後はバスで30分ほど離れたセイナッツァロへ向かいました。
セイナッツァロはサマーハウスが多く立ち並ぶ閑静な湖に囲まれた小さな町で、僕が行った日はちょうど夏至祭の前夜だったこともあり、リラックスして庭や湖の周りでくつろいでいる人を多く見ました。
フィンランドでは大小はありますが、別荘を持つことは一般的なことだそうです。
セイナッツァロにはアアルト設計の村役場があって、アアルト建築の中では一番好きだという人も多い建物です。
ちなみに、この村役場のゲストルームには宿泊できて、この夜の宿でもあります。
ユヴァスキュラ大学で見たことのあるディテールも多く使われていて、でも少し違っています。
アアルトは自分の持ち球を反復して使い、使い分け、熟練度を増していく人だったのかもしれませんね。
眩しいほど明るい回廊とは変わって、メインの議場は薄暗くて厳粛な雰囲気を演出しています。
大きな窓がありますが、ルーバーによって差し込む光は抑えられています。
議長席の横の窓もルーバーが設けられています。
光を感じる面積は大きいのに、薄暗い、妙に落ち着いて集中しやすい空間でした。
そして議場から回廊に降りると、トンネルを抜けたような開放感を感じます。
ここまで自然光を使い分ける建物を初めて体感しました。
朝の弱い光の差す回廊も印象的でした、これが見れるのは宿泊者の特権ですね。
夏至の影響で同じ日には見れなかったのですが、都市ごとにということでコエタロのことも書きます。
セイナッツァロの役場から南に2kmほど行ったところにアアルトのサマーハウスのコエタロがあります。
役場の設計のためにセイナッツァロを繰り返し訪れるうちに、ここが気に入って自身のサマーハウスを建てることにしたとか。
今では橋があって車で行けますが、もともとコエタロは湖からボートでアプローチする建物だったので駐車場から5分ほど山道を降りて行きます。
アアルトが自ら設計した木製のボートも展示されていて、ボートではありますが「らしさ」が細かな部分で見られました。
サウナ小屋も近くにあって、伝統的なサウナ小屋の佇まいですが、こちらも「らしさ」がディテールに現れています。
ここでは説明は長くなるので省略、、、。
さて、コエタロです。
ずっと写真で見ていた建物が目の前にあって、足を踏み入れた瞬間は感動的です。
印象的なレンガやタイルをパッチワークのように様々な貼り方をした中庭の外壁は、建築に対するアアルトのこだわりを体現しているような壁で、大きな壁画のように圧巻でした。
内部は明るいリビングダイニングに特徴的な構造で吊られているアトリエがあって、少し暗い寝室が3部屋あります。
ここでも村役場と同じように自然光の使い分けが印象的です。
サマーハウスなので、冬の長いフィンランドでは夏の光は存分に感じていたいのでくつろぎの場は明るく、でも夜の暗い時間が短いので寝室の窓は小さくして眠りやすいようにしているのだと思います。
静かで明るく、景色もよくて居心地がいい、とても心地いい家でした。
もっと居たかったけど、タイムアップ。
名残惜しく、何度も振り返りながら山道を戻りました。