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2015.04.04

杉の曲木


先月、仙台に行ったときに少し足を伸ばして山形県天童市の天童木工まで行きました。
天童木工といえば曲木の日本での先駆者であり、曲木の技術によって作られる柳宗理のバタフライスツールは世界的にも有名です。
他にも木のしなりや粘りを生かした曲木の家具は柔らかく軽く、独特の魅力があります。

その天童木工の工場は見学させていただけます。
当日の朝に予約をして、しかも1人だけなのに丁寧に案内していただけました。
加工から塗装や椅子張りまでの仕上げの工程まで説明付きで質問にも答えていただきながら案内していただきました。
バタフライスツールも曲げていましたね。

その中でも僕が一番興味が湧き、感動したのが杉を使って作られる曲木の椅子でした。
日本は陸地に占める森林の割合が世界的にみても多く、森が多い国です。
戦後に国策で杉やヒノキの植樹がされて木材はたっぷりあるはずなのですが、輸入材におされて使用率は低いです。
孫の代で資産になる森を目指していたのが結果的に孫の代が困っているというのは切ない話です、、。
日本各地で国産材の使用に対する試みはされています。
その試みの多くに思うところはありました。
「地元の木材を使って商品を作って流通させて森を元気にしよう」というのが多くて、地元の人たちが頑張るならいいんですが、都市部のコンサルやデザイナーに任せるというのに現状を変えるほどの変化はあるのかどうか。
とてもいいものができて、話題になって雑誌に載ったとしても一過性のものでしかないのじゃないか。
継続的に木が動かないと林業にも森にも変化は起きないように思っていました。
森のサイクルは人間のサイクルよりもはるかに長い、話題やトレンドなんてもっと短い。
ずっと疑問に思っていました。

もっと流通する建材を作るほうが林業にとってはいいと思っています。
天童木工では粘りがないので無理だと言われていた杉の曲げに成功しました。
何年も研究と実験を繰り返して、ようやく見つけたコツのような技術で杉材を曲げて椅子が作れるようになりました。
杉を圧縮して硬くする技術は確立されていました、大きく曲げることはできませんでした。
圧縮すると色味も赤くなっていましたが、天童木工の圧縮は色を変えません。
この技術の凄いところは今まで他の材料で作っていた家具に材料を杉に差し替えて作れる点だと思います。
杉の曲木のためのデザインを考えずとも、既存のデザインに杉材を使って作れる。
これで完全に今までの広葉樹の木材と肩を並べたことになります。
つまり杉で家具を作ることが特別なことでなくなる、ということです。
革新的なことだと思います。
しかもこの技術を隠さずに広めることもしているそうです。
どうにもならなかった日本の木が一気にスポットライトを浴びたように感じました。
今後もずっと、、です。
デザインではなく、会社の技術者が開発した技術で森を救った。
素晴らしいです。

見学した日も材料支給で図書館の椅子をたくさん作っていました。
行ってよかったです、感動しました。


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