『あるノルウェーの大工の日記』
『あるノルウェーの大工の日記』という本を読みました。
本屋をうろうろしていて、またどこかに行きたいな、と海外のガイドブックコーナーを眺めていて見つけた本です。
昨年にノルウェーに行ったこともあって、気になって購入しました。
内容は今の現役大工が住居の屋根裏の改修工事をしているときの話でした。
現調して、見積もりして、工事して、引き渡し、までという建築製造業の仕事の流れを、工事内容や現在の大工という仕事のことについて淡々と綴られています。
東アジアと北欧という距離を忘れるほど、共感できること、勉強になる言葉がたくさんあって面白かった。
この人とお酒が飲みたいなと思うほどです。
費用というのは、ものを作るには必ず付いて回る問題で、避けられません。
よく僕はお見積もりをするときに「日本で、ちゃんとした素材を使って、ちゃんとした工法で作ればこれくらいです」という感じで説明しています。
本の中では「コストは妥当」という言葉で同じようなことが言われていました。
いまでは値段の物差しが多くて、すぐにわかるので比べやすくなっています。
例えば『トイレ工事』と検索すれば、たくさんの業者の工賃の目安が見れます。
それに対して手元の見積書では割高になっていると『相場より高い』とお客さんは感じる。
不当に儲けようとしている人は、ごく希にいるのでしょうが、ほとんどの職人は真面目に丁寧にする作業内容なりの妥当な金額を出しています。
でも、その作業内容というのは工事を依頼するお客さんには違いが分かりづらくて価格で見てしまいがちなので安い方に依頼する。
作業内容は『早く済ますか』『丁寧にするか』はわずかな差かもしれませんが、10年後の状態に大きな差が出ることもあるでしょう。
ある種の『正直者が馬鹿を見る』ことがノルウェーの建築業界でもおきているようです。
それでも著者は自分の技術と知識を信じて、妥当な賃金で『いい仕事』をしている。
その姿勢に強く共感して読んでました。
僕の仕事の範囲でも、もやもやと思うことがありますが、職人として同じ思いで働いている人が遠くノルウェーにいるだけで、心強く思いました。
「さぁ、頑張って作るぞ」そう思わせてくれた本です。